とうとうデンマーク生活も折り返し!
ということで、かねてからしたら行ってみたかったナーシングホームへ行ってきました!
突然の訪問依頼メールにも暖かく快諾して下さったのは、
Hoejagercentret様
コミューン(行政)運営の公的老人ホームです。自転車で40分ほど。ぜーんぜん苦じゃございませんよ⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
見た目ははぁはぁ言ってましたが心は軽やかに行ってきました✨
ホームでケアワーカーとして働くスーザンさんが早速出迎えてくれました。
自分でもビックリする位とめどなく出てくる質問は後に回してまずは概要などを紹介します!
⒈施設概要
ここhoejagercentretは4つのホームからなるユニット制をとっています。入ってすぐ感じたことは、やっぱり広っ!(オーストラリアと同じで土地の事情が違う)、独特の臭いがない、そしてオートロックがない!ことへの驚きでした。
まず、いかほど広いか設備をご紹介😎
<各ユニットにあるダイニング>
各ユニットによってインテリアや天井の高さなんかもちょっとずつ違う不思議と面白さ。
<キッチン>
1ホーム(12名のご入居者)に対してこの広さのキッチンがあります。冷蔵庫も業務用で中も食料がギッシリ!!
「何か災害があってもみんな1ヶ月は生き延びれるわ」とスーザン。確かに。災害の少ないデンマークでこのレベル。日本こそ必要ですね。
〈居室(各ホームに12室ずつ)〉
この4つのホームの他、
- ホームヘルパー事務所
- ランドリールー厶
その他、地域に解放またはレンタルされてるスペースとして
- ITカフェ(パソコン教室)
- クリニック(地域の人も利用)
- ミーティングルーム(レンタル可)
- ボランティアルーム
- カフェ&ランチ食堂(平日のみ)
<興味深い工夫>
⒈居室にある移乗補助レール
上手く撮れてないのが申し訳ないのですが、天井にご注目!!何やらレールがあるのに気づきますか?
バスルーム前(大体の人がベットを置くスペース)からバスルームまでと出入口までの2方向にレールが走らされており、非介護者を吊り下げて移動させることが可能な代物なのです!!!!
噂に聞いていたこの、移乗補助レール✨家庭にも福祉用具として普通に付けられるようで特に驚くことではないらしい。でも驚き!
二人がかりで頑張って運んできて使う介護リフトよりシンプルで使いやすいと感じます。
⒉いろんなコロコロ
これ以外にも、高めのゴミ箱やシーツを集めるかごにもコロコロが。働く人が屈んだり、持ち上げなくて済むように工夫されてます。
⒊Rickshaw(自転車式車いす)
日本語訳をすると「人力車」とのことですが、我ながらいいネイミングだと思います⸜((˙꒳˙ ))⸝デンマークでも最先端のよう✨
3つのタイプがありまして、
- 介護者が後ろからこいで進む
- 2人でよいしょとこいで進む
- 電動(笑)
電動ありなの!?って感じですが上の写真の座席に乗ってるのが電源。
実際のところほぼ1の使い方が多いらしく、こいで連れ出してくれるボランティア団体がよく来てくれるのだそう✨
実際の外出風景がこちら、
どこか斬新さと可愛らしさがあります。
エコな国、外の新鮮な空気を大事にしてるがゆえ生まれた活用法ですね!
★1~3まではモビリティに関する工夫となりました。やはり移乗介護は介護者にとって最も負担の大きい仕事ですし、移動の自由は高齢者の尊厳や楽しみに大きく影響すると思います。
⒋壁画
そうこれ、ドアなんでーす⸜(ˊᵕˋ)⸝
この一見するとランプの紐も、引っ張ると壁が開くんでーす!
もちろんドア以外にも至る所に素敵な壁画が描かれてて殺風景な感じがしません。これは認知症の方にとても有効とのことで、
「ドアだと分かると開けようとしてしまうけどドアに見えないとガタガタ開けようとしないでしょ」とスーザンさん。
ただ、このユニットを仕切るドア、近づくと自動でバーンと開きますし、施設全体の出入口だって普通の自動ドアなのでフラっと出ていけます。意味あるのかな?とも思ったんですが、オートロックがない事への質問に
「出ていきたかったら出ていってもらっていいし、私たちは見守ってるから、認知症の方が出ていったらそっとついて行って散歩して一緒に帰ればいい」とスーザンが答えてたのを思い出しました。
そんな全員を見守ることなんてできるのかな…と疑っておりましたが、もうそんな疑いはない!
これは認知症の方々を閉じ込めたいからの工夫ではなく、ドアを見つけたから開けたいのに開け方が分からない。という混乱を減らしてあげる工夫なのかなと感じます。
★ちなみに出入口の近く(つまり地元の人や来客がよく通る)の壁には地元の若手アーティストの絵画が飾られてます。2週間ごとに入れ替わるのですが、ご入居者やスタッフ、地元の人などが買っていくそう!
こういう地域交流もあるんですね😊
以上、施設概要でした!
⒉施設の基本方針
hoejagercentretはEden Alternative Philosophyを実践しているデンマークに16施設ある内の1つ。
この哲学は何かといいますと、老人ホームから
- 孤独
- 退屈
- 無力感
を排除することで、ケアを受ける人提供する人の幸福を高めよう。という考え方です。
hoejagercentretはこの辺りの地域の代表を務めてる施設です✨
単に掲げている絵に書いた餅ではなくて、ここでは本当にこの哲学に基づいてケアが実践されてます。シンプルですけど、ケアワーカー主体になるとどれも達成できないため難しいはず。筋が通っていてとても美しかったです。
まず、孤独と退屈の排除に向けた取り組み。
日本では、食堂やユニットの廊下でかたまって座ってはいるけど、何をしてる訳でもない。ただスタッフが少数でも多数を見守りやすいから集めてるって現象をよく見ますし、お話したいし、一人一人ともっと関わりたい!と思ってもそんな時間が取れないのが現実でした。
このホームでは、そもそも驚くほどゆったりしている時間が流れているので、各ユニットに3人いるワーカーはご飯を作る時以外は基本的に大きなダイニングテーブルに座ってご入居者とお話をしてたり編み物をしたりしているので、自分の意思で今は1人でいたいから部屋にいよう、お茶に誘われても「今はいらないよ」と言わない限り誰かが必ずいて受け入れてくれる環境がある。
また施設自体がとても地域に開かれてるので地元のボランティアも普通にやってきてお散歩やお買い物に連れ出したり毎週木曜は地域の方も参加するダンスパーティーを開くとか。車椅子の人でもペアダンスなら踊れるし、特に認知症の方には音楽とダンスはとても良いと話してました。人との繋がりは感じやすい環境ですね。
また、人以外も✨各ユニットに必ずいる、猫・犬・鳥といった動物や植物も愛をあげたり受け取れる大事な要素。ちなみに、この動物はみんなで飼って皆で世話をしています。エサやりをするのも、できる・やりたいご入居者に任せているので
2の無力感の排除にも一役かっているとのこと!
続いて、無力感の排除に向けた取り組み。
施設生活であろうと在宅生活であろうと、身体がだんだんと弱ってくるのを感じ、忘れやすくなってることを自覚し、介護を必要とし始めると誰しもが出来ないことにフォーカスし始めて無力感を感じやすくなるもの。
デンマークの高齢者であっても同じく感じるのかな、とは思いますが、日本とはちょっと基本が違うように思います。
まず、デンマーク人は小さい時から興味を持ったことを始める・続ける・やめる、を自己決定でしているので高齢者と呼ばれる年齢となる頃には、何が好きで趣味で続けたくて、何がしたくないか等が明らかになってます。また”年金暮らし”に対する感覚も違う気がします。日本で退職された人に「ご職業は?」と尋ねると「もう退職してます」と答えられるのが一般的だと思いますが、デンマーク人は「Pensioner(年金受給者)だよ!」とちょっと誇らしげに答えてくれます。働いてたくさん税金納めてきて、家族も巣立ってやっと自分達に時間が使えるんだよ☀という感覚。
医療は無料、介護費も年金で十分賄える(このホームで月額約18万円)となると子供に面倒をかける感覚もなく、働いてきた自分の貯金を使うだけのこと!という感覚となるのでしょうか。
やはり、日本の方が施設介護の方針等の前に無力感や繋がりのない孤立を感じやすい悲しいベースがあると思います。
…が、それでも感じてしまう無力感。hoejagercentretではユニットごとにある広くて高さも変えれるキッチンで毎食ご飯を作りますが、この時も手伝える方には手伝ってもらうし、洗濯物を畳む・ペットのエサやりもできる人が、1週間の献立を決める会議にはスタッフとご入居者全員で決めるなど、何かしら全員が役割を持ってもらうことを意識されてました。
出来ることや興味のあることに焦点をあててエンカレッジしていく、ストレングスモデルに似ているでしょうか?
日本にもこの意識は浸透しつつあるのではないかと思います。
とても素敵なホームであることが分かって頂けたでしょうか?次回は、もう少し働く人にフォーカスしていきます(^^)